小さな産地に息づくこだわり 東京産いちごの魅力
東京産のいちごを目にしたことはありますか?
東京産いちごは生産場所も収穫数も非常に限られており、全国でも非常に規模の小さな産地です。そのため、食べたことがない人や見かけたことがない人も多いかもしれません。
その規模と現場とは、どのようなものなのでしょうか。
年間収穫量が全国の0.1%に留まる東京のいちご事情

東京で作られるいちごの年間収穫量は約218tと、全国のわずか0.1%。(※)そのため、多くの店に広く出まわるものではなく、手に入るのは近隣の直売所や摘み取り体験などが大半。しかし言い換えれば、都内で暮らす私たちが鮮度と糖度の高い状態で手に取り楽しめるのが、東京産いちごの魅力です。
さらに、生産者と消費者との顔が分かる近さゆえに、どんな生産者がどんなこだわりや思いを持っているかが伝わりやすいのが、東京産ならでは。
土地の広さと収穫量の多さでは全国区の産地には敵わない。だから、近くにいる消費者に喜ばれるおいしさで勝負したい。東京のいちご生産者の多くは、そう思いながら今日も畑に立ちます。
※参考 統計で見る日本 e-Stat 作物統計調査 作況調査(野菜)確報:令和4年度野菜生産出荷統計
より完璧を求めて。加藤農園が追い求めるいちご
練馬区にある加藤農園は、江戸時代から代々伝統野菜の練馬大根やキャベツなどの露地野菜を作り続けてきました。2011年に加藤博久さんが農園を引き継いでから、農園の差別化や事業拡大を意識するようになり、いちご栽培に挑戦。国内外さまざまな産地での研修を経て、2015年よりいちご栽培をスタートさせます。

加藤農園のいちごは、真っ赤に熟しても果肉がゆるむことなく、口の中で歯ごたえを感じられるのが特徴です。どうしたら更においしくなるか、栽培をはじめて10年が経った今でも、試行錯誤を続けているといいます。
冬に赤く色づいたいちごができあがるためには、前年の冬から親株となる苗を植え、翌シーズンに向けて準備をはじめます。収穫までの約1年の間に重視しているのが、病害虫から守ること。特に、いちごの親株からランナーと呼ばれる茎を伸ばして子株を次々と増やしていく5月から9月にかけては、ハダニなどの病害虫に侵されないよう細心の注意を払い育てていくそう。
順調にいちごが生育して花が咲き、収穫が近づく12月。この時期に重要なのが収穫のタイミングです。

「最適な収穫の瞬間を見極めるには、少なくとも2、3年はかかります」
完熟を迎える前に摘み取ったいちごは、甘さが十分に感じられません。しかし、熟れ過ぎると実が柔らかくなってしまいます。徐々に下がる気温の変化といちごの熟成を見ながら、収穫のタイミングを判断するのは、毎日ハウスにいても一朝一夕ではできないとのこと。
加藤さんがいちごの仕上がりに徹底的にこだわるのは、お客様の顔がしっかりと見える商売だから。
「収穫したいちごの半数は、店頭の直売所に並びます。いちごは味への期待が特に高く、お客様の評価もシビアです。だからこそ、毎シーズン弛むことなくおいしいいちごを追求していきたい」
直売所の購入客の大半はリピーター
加藤さんのこだわりと努力は、買いに来たお客様の反応にも現れます。いちごを求めて訪れるのは、大半がリピーター客。地元の方だけでなく、遠方から車で来る人も少なくありません。中には購入後、駐車場に戻って一口食べてから、すぐにもう一度買いに戻って来る方も。

また近年は、レストランやホテルの方からも注目されている、加藤農園のいちご。都心の一等地にあるレストランやラグジュアリーホテルなどをはじめ、海外の飲食店でも選ばれています。さらに、香港、シンガポール、クアラルンプール、シアトル、ニューヨークなどへの輸出も急速に増えているとのこと。
「世界中どこでも、おいしい状態でお届けします」加藤さんは信念を込めて語ります。
いちごの品種別の特徴

加藤農園で現在栽培している主な東京産いちごは、次の3種類です。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ほしうらら | ほのかな酸味としっかりした甘味とフレッシュな香りが特徴。食べやすい歯ごたえで、子どもにも人気の高い品種。 |
| スターナイト | 甘味と酸味がどちらも感じられるバランスの良いいちご。ショートケーキなどの生クリームを使ったスイーツとも好相性。 |
| みくのか | 程よい酸味とジューシーな甘さが特徴。2025–2026シーズンに始めたばかりの、加藤農園新作。 |
加藤さんがいちごの品種を選ぶ基準は、甘味と酸味がバランス良く感じられること。ただ、品種が変わればそれぞれの特性や育て方、収穫の見極めのタイミングが変わります。
本当においしいいちごを追求する加藤さんにとって、長期的には品種の見直しや絞り込みを検討することもあるとのこと。ぜひ3種類が揃っているうちに、それぞれの味を試してみてください。
いちごの保存方法
加藤さんによると、いちごは冷蔵庫や玄関などの涼しい場所で保存するのがおすすめ。温度変化が少ない場所で保存するのが鮮度を保つコツです。冷蔵庫に保存する人が多いかもしれませんが、扉の開閉による温度変化の影響を受けにくい場所に保存したり、ビニール袋に包むなどするとベター。
完熟でも果肉感を感じられる加藤農園のいちごは、適切に保存すれば1週間は日持ちします。あたたかくなった春は、もう少し早めに食べ切るといいとのこと。
おいしいいちごの見分け方

おいしいいちごを見分けるポイントは、ヘタの部分。ヘタの根元まで真っ赤になったいちごは、しっかり甘さが出ている完熟の状態です。 完熟でも、品種によって甘味が強く出るものや、甘味と酸味どちらも感じられるものもあります。加藤さんは、10年にわたるいちご栽培とさまざまな地域のいちご生産者を巡った経験から、同じ品種でも、栽培環境や生産者が変われば味は全く違うものになると話します。
生産者のこだわりが伝わりやすいのが東京産いちごの魅力
加藤農園のようなこだわりが詰まった東京産いちごは、収穫まで丁寧に管理していくためにどうしても生産量が限られてしまいます。そのため、広く出まわるものではありません。
東京で暮らしている私たちにとって、東京産いちごは直売所へすぐにアクセスできる距離の近さが魅力です。生産者がこだわり抜いたいちごのおいしさを、ぜひお近くの直売所で堪能してください。
東京産いちごが食べられる場所はこちら
直売
いちご狩り
- TOKYO GROWN
ページ内の検索窓に「いちご」と入力して検索。 - 練馬区
- JA東京むさし
そのほかの購入先
- JA東京中央 ファーマーズマーケット千歳烏山
- TOKYO GROWN
ページ内の検索窓に「いちご」と入力して検索。 - 食べチョク(ECショップ)
取材協力:株式会社カトウグリーンファーム代表取締役 加藤博久さん

江戸時代から続く加藤農園を継承するため、2011年に就農。農園の事業拡大を目指して、栃木、群馬、埼玉のほか、海外のいちご産地に赴き、2015年より本格的にいちご栽培を始める。10年にわたる栽培で十分に引き出された甘さと果肉の硬さが好評を博し、店頭直売や都心部のホテル・レストランメニューに取り入れられているほか、海外からも高い評価を得ている。
加藤農園直売所
取材・撮影:みつはしさなこ
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