こだわりのきのこ栽培と、それを支える組合の取組みにせまる!
ニュース
公開日:2024年12月27日

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都心からのアクセスの良さと、自分で摘み取ったきのこをその場で味わう体験が人気となっている東京の『内沼きのこ園』。
併設のカフェも人気で、遠方から訪れる方もたくさんいます。
そんな人気施設をつくった背景やきのこづくりの課題について、内沼きのこ園を営む内沼秀夫(うちぬまひでお)さんと、東京都椎茸生産組合連合会の柴田修一(しばたしゅういち)さんにうかがいました。
「ホンモノ」にこだわったきのこ栽培

内沼きのこ園・代表の内沼秀夫さん
内沼さんがきのこ園をはじめたのは40年近く前のこと。たまたま青梅市で広い土地を見つけて購入し、チェンソーを持って自ら森林を開墾してきのこ栽培を始めたそうです。
最初に購入したのは1,000坪の土地ですが、現在は原木シイタケ、ナメコ、ヒラタケ、クリタケなどを栽培し1ha(3,000坪以上)まで規模を拡大しています。
東京のきのこ生産者さんは、内沼さんのように、家業として継いだといった形ではなく、ゼロから始めた生産者の方も多数いるとのこと。
内沼さんが他の生産者と違う点はその栽培方法にあります。
きのこ栽培を始めた当時、「有機栽培」という言葉が流行り始めたこともあって、内沼さんは、はじめから自然に近い「原木栽培」という方法にこだわって、きのこの栽培を始めました。
内沼さんいわく「ホンモノを知ってもらいたい」という思いが強く、管理がしやすい菌床栽培が主流な中、今でも原木栽培にこだわっています。

そんな内沼さんが考える東京できのこ栽培をおこなう利点は、目の前に約1,400万人の消費者がいること。
そのうち0.1%の人が関心を持ってくれたとしたら、それは大きな需要です。さらに、都心から片道たったの1時間程度で、普段体験できないような面白い取り組みをすることが出来るのも大きな魅力。
自然を体感しながらきのこの摘み取りをおこなうというコンテンツは、家族連れや外国からの観光客などに好評で、地方から視察にくる団体もあるのだとか。
内沼さんも、実際に体験を通じ、来てくれた人が採れたてのシイタケを美味しそうに食べる顔を目の前で見ると、生産者としてとても嬉しい気持ちになるといいます。きのこ嫌いの子どもが、内沼きのこ園での体験をきっかけに、きのこを好きになってくれることもあるほどの美味しさです。

園内では原木シイタケのほか、ナメコやヒラタケ、クリタケなどを栽培
きのこ業界の課題に向き合う東京椎茸生産組合連合会
そんな素晴らしい機会を提供している内沼さんや、東京都内できのこを栽培する生産者の欠かせないパートナーとして「東京都椎茸生産組合連合会」の存在があります。東京都椎茸生産組合連合会は、きのこ生産をおこなう市町村ごとの組合をさらに統括する立場として存在し、東京できのこ栽培をおこなう生産者の支援をおこなっています。
現在、都内のきのこ生産は青梅市や八王子市、府中市などで行われており、各組合や振興会をまとめたり、包括的な支援をおこなったりすることが主な目的です。
生産者の支援とPR活動の役割を担っており、生産者からの種菌や原木注文の受発注や補助金などの相談、指導員の紹介や、ほだ場(シイタケの原木を栽培する場所)巡回、直売イベントの参加など多岐にわたります。
小規模な生産者は発注量が少なくメーカーに直接発注することが難しいため、連合会が間に入ることで、生産者がきのこ生産に取り組みやすい環境づくりを裏で支えているのです。
さらに、新しく始めた人への指導や育成にも力を入れており、毎年1回、メーカーの指導員や東京都の普及指導員、ベテランの生産者などを交えて巡回指導を行っています。
各生産者の栽培状況をチェックし、アドバイスを通じて品質向上を図っています。また、新しくきのこ栽培を始める人の相談にも乗り、既存の生産者を紹介するなどのサポートも行っています。

東京都椎茸生産組合連合会の常務理事を務める柴田修一さん(左)
連合会の常務理事を務める柴田さんが、業界が直面する二つの課題について教えてくれました。
一つ目は後継者不足の問題です。東京の生産者は小規模であり、大規模な産地との競争は難易度が高いです。そのため、東京ならではの生産方法や販売方法を模索し、安定した収入を担保できる環境を整えること、後継者が継承しやすい環境づくりについて試行錯誤しています。
二つ目は原木の価格上昇です。もともと大規模な原木の供給地であった福島県が原発事故の影響を受けて供給量が減り、約10年前は1本220円ほどだった原木が、今では400円近くになりました。この問題を解決するために、東京都椎茸生産組合連合会は、東京都に対して原木を買うための支援の要望をおこなうなど、生産者の負担を軽くすることに尽力しています。
原木を使ったきのこ栽培は、きのこを自然な方法で作ることができるだけでなく、環境にも良い影響を与えます。木を切ることで新しい木が育つので、自然の循環にもつながっています。
また、東京で取れた木を使うことで輸送コストやトラックの排気ガスを減らし、結果的に緑を増やすことにもつながります。
実は、都内で東京の木を使ってきのこ栽培をしている内沼さんたちの取り組みは、環境にも配慮した合理的な生産方法なのです。
生産者さんおすすめ!美味しいシイタケの食べ方

原木栽培のきのこは、菌床栽培のきのこと比べて、自然な風味が強く、”ホンモノの味”を味わえるのが特徴です。
実際に取材スタッフも試食しましたが、特に香りが強く感じられ、その存在感たっぷりな美味しさに驚きました!
内沼きのこ園では、味、香り、歯ごたえを優先した品種選定をおこなっています。形が良い方が美味しいというイメージを持ってしまいがちですが、形が良い=美味しいとは限りません。
味には妥協せず、ホンモノにこだわってつくることが美味しさの秘訣となっています。
そんなきのこの良さを最大限に味わうためには、どのような食べ方が良いのでしょうか。
内沼さんは、あまり手を加えずにシンプルな食べ方がおすすめだそうです。炭火で焼いて塩をかけるだけでも最高。また、新鮮なきのこを持ち帰ってそのまま炒めて食べると、きのこがもっと好きになるに違いありません!
きのこ料理のレシピはスマホで検索すればたくさん出てきますが、シンプルな調理法が一番きのこ本来の味を引き立ててくれるそうです。塩や醤油、バター醤油など複数の味付けで食べ比べをするのもいいですね♪
みなさんも、実際に都内のきのこ農園に足を運んで採れたての味を楽しんでみませんか?
きっと美味しいきのこをつくるために尽力する皆さんの想いを感じながら食べるきのこは、普段とは違う格別の味です!
▼取材協力
内沼きのこ園
http://u-kinoko.jp/
取材者:大学2年生K・H
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