環境にやさしい「東京フューチャーアグリシステム」とは?~都市農業の将来を支える新技術にせまる~
ニュース
公開日:2025年03月21日

―――――――――――
他県と比較して農地面積が少ない東京都。そんな東京において、東京ならではの新技術で都市農業の未来をつくる取組が行われていることをご存知でしょうか?
それが「東京フューチャーアグリシステム(TFAS)」。
このシステムは、都市部ならではの限られた空間や資源を有効活用しながら、環境にやさしく持続可能な農業を実現する技術として注目を集めています。
今回、「東京フューチャーアグリシステム」を導入した栽培施設を備えた「インキュベーション農園」を利用している農家の谷晃成さんが管理されているハウスにお邪魔してきました!
そもそも東京フューチャーアグリシステムとは?

「東京フューチャーアグリシステム」は、コストの抑制と環境への配慮をしながら、高い生産性を実現するという目的で開発された太陽光利用型の「東京型統合環境制御温室(商標名:東京ブライトハウス)」と「東京式養液栽培システム(商標名:東京エコポニック)」による施設です。
東京ならではの小規模な農業経営規模にあわせて、ICTを活用し、コンピューターが日照量や温湿度等の環境条件をもとにリアルタイムで計算、自己判断し、ハウス内環境を全自動で制御します。
「東京ブライトハウス」と名付けた温室は、太い骨材を使用することで細かな骨材の使用量を減らし、ハウス内への日照量を増やしています。また、天井部のビニールを二重にして間に空気を入れることで暖房コストの削減につなげています。


また、「東京エコポニック」の最大の特長は、養水分の「循環方式」を採用していることです。循環方式では、かん水や液肥に使用した養液を排水せずに再利用するため、水資源の無駄を抑えることができます。
培地にはヤシの実の殻を活用しており、天然の力を用いることで数年間の連用が可能です。これにより、培地の交換頻度を減らし、コスト削減と環境負荷の低減を両立しています。
さらに、IoT技術を活用した環境制御が導入されています。
センサーを用いて温度、湿度、光量などをリアルタイムで監視し、データに基づいた最適な栽培環境をタブレットやホームページ上で管理することが可能です。
これにより、栽培の効率が向上し、労力の削減にもつながります。 これまでトマトやパプリカ、キュウリ、イチゴ栽培などへ展開されています。
▼詳しくは…
https://www.tokyo-aff.or.jp/site/smartagri/32627.html
導入事例~谷晃成さんの場合~

今回は、「東京フューチャーアグリシステム」を活用している農家の事例をご紹介します。
谷晃成さんは東京都日野市でトマトを中心に栽培する農家です。
これまで施設での土耕栽培でトマトを育て、春先の出荷を行っていました。しかし、冬~夏場まで安定してトマトを出荷できるようにするため新しい栽培方法の導入を模索していました。
そんな中、東京都の普及指導員から「インキュベーション農園」の利用を提案され、挑戦することを決意しました。
はじめは土耕栽培と養液栽培の違いに戸惑い、温度や湿度の精密な管理、病害の発生条件の違いなどに苦労しました。特に、ハウス内の湿度管理やトマトがかかりやすい”うどんこ病”などの対策には試行錯誤を重ねたといいます。
しかし、導入から数ヶ月が経過し、徐々に栽培技術にも慣れ始め、今では安定した収穫が見込めるようになってきました。近辺では養液栽培を実践する先輩農家さんも多く、様々な助言・アドバイスをもらったそう。
養液栽培は、天候に左右されにくく、品質の均一化が可能な点も大きなメリットとなっています。また、収穫量が増加したことで市場への安定供給が可能になり、販路の拡大につながることが期待されています。
今後は、トマトのどの品種をどれだけ栽培するかなどを見極めながら、「東京フューチャーアグリシステム」の活用方法を検証していきます。
「都市部で農業を続ける上で、新しい技術を積極的に取り入れていくことは不可欠です。「東京フューチャーアグリシステム」は、狭い土地でも導入しやすく、今後の農業の可能性を広げてくれる技術だと実感しています」と谷さんは語ります。
谷さん、普及指導員の方、東京都庁職員の方、東京都農林総合研究センターの方とチーム一丸となって、この新たな技術の未来を切り開いています。

今回は特別に、「インキュベーション農園」で栽培された大玉トマトを試食させていただきました!
普段食べているものよりも、コクがあり甘みも酸味もほどよくジューシーな味わいでした。
東京フューチャーアグリシステムが目指す未来
「東京フューチャーアグリシステム」は、都市農業の新たな形を示す技術として、大きな期待が寄せられています。
今後は、AIやロボット技術との連携を進め、さらなる自動化を目指した取組が進められることでしょう。例えば、AIを活用した生育予測システムを導入することで、収穫時期をより正確に予測し、無駄のない生産計画を立てることが可能になります。
さらに、「東京フューチャーアグリシステム」は、他の都市部でも応用できる可能性があります。人口が集中する都市部では、新たな農業技術の導入が求められており、こうした取組が全国的に広がることで、より持続可能な食料生産体制が構築されるでしょう。
一方、農業の原点でもある人の視点も忘れてはいけません。都市農業の魅力の1つに、生産地や生産者と消費者との距離が近いことが挙げられます。環境や健康に優しいことや、最先端の農業技術を扱っていることなど、生産者のこだわりを消費者に直接伝えることができるのは大きな強みになります。
新技術と人の温かさの融合が都市農業の未来の鍵を握るかもしれません。そして「東京フューチャーアグリシステム」やそれを取り巻く人のつながりがその一助になってほしいものです。
これからの展開にぜひ注目していきたいですね!
▼取材協力
谷晃成さん(日野市農業者)
谷さんが出店する「ひのトマトマルシェ」の概要とSNSはこちら
【開催日】
4/20(日)
【開催時間】
11:00~15:00
【ホームページ】
https://neighborsfarm.tokyo/2025/02/11/2025hinotomatofes/
【Instagram】
https://www.instagram.com/hinotomatofes/
取材者:大学4年生S・A
―――――――――――
今後も東京都の農林水産業についての情報を発信していきます!
ぜひ皆さんも、東京都の農林水産業について「気になる!」「これを知りたい!」という情報やご意見がありましたら、ぜひファンクラブ事務局まで教えてくださいね!
▼情報やご意見はこちらからどうぞ
https://www.tokyo-aff-fc.jp/contact/
それでは次回の更新をお楽しみに♪