食わず嫌いはもったいない!クセになる味「くさや」の秘密とは?~大島特集vol.1~
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公開日:2025年03月19日

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大島は東京・竹芝の客船ターミナルから高速船で1時間45分。
遠そうで行きづらいイメージをもたれていますが、高速船が一日複数便発着しており、大型船の定期運航や調布飛行場から飛行機で25分程度と、都心からのアクセスも良好です。
また、天気の良い日は神奈川県や千葉県、静岡県からも目視で確認することができるほど近くにある島です。
大島は周囲約52 kmの面積の中に、海岸線沿いにそびえ立つ緑豊かな山々や剥き出しになった地層の断面、たび重なる噴火により溶岩流の跡など、ジオパークにも認定された様々な自然を感じさせる島です。そして今の時期は、島内のいたるところに名産の椿が咲き誇り観光客を楽しませています。

そんな大島の名産品「くさや」をご存知でしょうか?TVなどのメディアで聞いたことはあっても食べたことがある方は意外と少ないかもしれません。
今回は、「くさや」の加工を行っている有限会社まるい水産の代表取締役・奥山健一(おくやま・けんいち)さんにお話をうかがいました。

「くさや」ってなに?

ところで皆さんは、「くさや」という食べ物がどんなものなのか知っていますか?
「くさや」とは、魚類を「くさや液」という塩を含んだ液体に浸した後に、乾燥させて作る干物のことです。もともと、海が荒れて漁に出られないときの保存食として、大島をはじめ同じ伊豆諸島に属する新島や八丈島などで昔から作り続けられてきました。
くさやのもとになる魚は、大島ではムロアジが3割、アオムロが6割、トビウオが1割くらいの割合なのだそう。

匂いのもとは秘伝のタレ「くさや液」!?
大島に到着してすぐに、「くさやの加工場を見学するなら絶対にマスクをつけていった方が良い」という忠告を受けていた筆者。名前の語源にもなっているとおり、くさやはその匂いが特徴的です。この匂いをつくっているのが「くさや液」です。

くさや液は、各地域・各店でもそれぞれ濃度や味、匂いが異なるのだそう。
ちなみに、くさやを作るために魚を液体につけ込む時間は一昼夜。これ以上長くつけてしまうと塩辛くなりすぎてしまうのだとか。また液体を腐らせないよう、つけ込む前に血やはらわたをあらかじめ抜いておくことが重要です。
まるい水産では、くさやを製造する魚をさばき、くさや液に漬け、干すまでの全ての工程を手作業で行っていました。

そんなくさや液のもとになっているのは実は塩水で、塩が貴重だった時代に液を無駄にせずに繰り返し魚をつけ込んだ結果、発酵が進んで今の状態になったといいます。ちなみに、まるい水産のくさや液の原液は、なんと300年前に作られたものなのだとか。
くさや液につけ込んだ魚を液体からあげる際、魚から洗い流した液を取っておいて塩を追加した上でもとのくさや液に加えるのだそうです。こうすることで、くさや液がなくなってしまうことを防いでいます。
また工場の地下には水槽があり、温度を一定に保っておくという目的から、魚をつけ込んでいる時以外はくさや液を地下に移動させるそうです。三原山の大噴火などの自然災害も乗り越えて、まるい水産のくさや液は300年間守られてきたのです。
くさや液につけ込んだ後の魚は、一日半から二日ほど、天日干しにするか乾燥機の中で冷風を当てて乾燥させます。この日製造されていたくさやは1,000尾ほどですが、多い時では一度に4,000尾のくさやを製造するそうです。完成したくさやは島内外で消費されるか、土産屋に卸されます。

一度食べるとクセになる味
昔は一般家庭でも保存食として製造されてきたくさやですが、現在、島内で製造を続けている事業者はまるい水産のほかに一軒しか残っていません。25歳の頃から45年間、まるい水産の4代目としてくさやの製造を続けている奥山さんは「自分ができる範囲で製造を続けていきたい」と話してくれました。
実は筆者は魚介類が苦手なのですが、まるい水産で出していただいたくさやを味見してみたところ、魚特有のくさみが抑えられておりとても食べやすいと感じました!
大島ではくさやが給食でも提供されているそうで、「島外への出張から帰ってくると真っ先に『くさや』が食べたくなる!」という島民も少なくないのだとか。
郷土食として大島で愛されている「くさや」、ぜひ皆さんも一度味わってみませんか?
大島の魅力を詰め込んだお弁当
まるい水産を見学させていただいた後、「都立大島公園」に向かいました。
園内には約1,000種類もの椿が植えられているそう。赤色や濃い桃色だけでなく、白色や黄色の椿が植えられ、大島産の種もあれば、全国各地の種もあり、中にはニュージーランドやアメリカなど、海外産の椿もありました。

この日の昼食には、大島の弁当屋「ゴハンヤコン」のお弁当をいただきました。
今回の取材テーマである「くさや」のほかにも、明日葉、椿、はんばのりなど、大島ならではの食材が詰まったお弁当です。彩り豊かでおかずの種類も多く、大島を訪れる人には自信を持っておすすめしたい一品です!

▼取材協力
有限会社まるい水産
取材者:大学3年生M・N
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