【東京・小平市】栽培発祥の地で摘みたてを味わう小さく甘酸っぱい果実 ブルーベリー農園探訪

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公開日:2025年09月02日
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新宿から電車で30分ほどでたどり着く小平市。バスに乗り駅のまわりのショッピングセンターを抜けて進むと、ぽつぽつと畑が見えてきます。
実はこの小平市が、ブルーベリー栽培発祥の地と言われていること、さらには東京が日本一のブルーベリー生産地であることをご存じでしょうか。

小平市で20年以上にわたってブルーベリー栽培を続ける「ベンズファーム」の深谷勉さんを訪ねました。

「ベンズファーム」深谷勉さんと「JA東京むさし」植松颯大さん
「ブルーベリーは育てる人によって味が違ってくるんですよ」と話す深谷さん(左)と、JA東京むさしの植松颯大さん(右)。

小平市から始まった、東京ブルーベリーの物語


ベンズファームのブルーベリー畑

日本にブルーベリーがやってきたのは1951年。最初に導入されたのは、冷涼な気候に適した品種でした。その後、より温暖な地域でも育ちやすい品種が加わって、東京農工大学の故・岩垣駛夫教授が後者のブルーベリー生産研究を始めました。そして教え子である学生が、1968年に小平市で商業栽培をスタートさせます。

栽培が広がり、東京が全国一の産地へ


たわわに実るブルーベリー

2000年代に入ると健康志向の高まりやブルーベリーに対するおしゃれなイメージなども重なって、徐々に小平市でブルーベリー栽培に取り組む農家が増加しました。観光農園をしたいと考えていた深谷さんがブルーベリーの栽培を始めたのもこのころです。
2015年には東京都が全国のブルーベリー生産量で1位を記録。現在もトップの地位を築いています※。都内では青梅市、八王子市、町田市、日野市、練馬区などでもブルーベリーの栽培が盛んです。特に摘み取りや軒先直売の割合が高いのが東京都の特徴。自分で収穫する楽しみがある摘み取り体験が近くでできるのが魅力です。

小平市で多く栽培されているのは、「ティフブルー」と呼ばれる種類のブルーベリー。”ウサギの目”に由来するラビットアイ系の品種で、深谷さんによれば「甘味と程よい酸味のバランスがちょうどいい」のだそうです。

※参考:農林水産省 特産果樹生産動態等調査(令和4年産)

おいしく楽しんでもらうための栽培のこだわり


摘み取り作業を行うベンズファームの深谷さん

栽培を始めたからといって、すぐにブルーベリー農園がスタートしたわけではありません。最初の3年間は、実よりも木を育てることに注力したそう。「まずは立派な木を作らないとおいしいブルーベリーにならない」との考え方からでした。
 
さらに深谷さんは、ブルーベリーの摘み取りを一般の方々が楽しめるよう、木の配置にも工夫を凝らしています。農園内をゆったり歩きまわれるように、木と木の間隔を広めに植え、立って摘み取りができる高さになるよう、こまめに剪定しています。おかげで、摘み取り体験には親子連れの方から車椅子の方まで来られるとのこと。この日も夏休み中の小さな子供たちが楽しそうにブルーベリーを摘んでいました。

ベンズファームの2025年シーズンの摘み取り体験は、8月初旬の3日間、午前中限定で実施されました。
生育状況や来園者の熱中症リスクを考慮し、限られた期間での開催でしたが、初日には500人にのぼる方々が訪れ、近隣の提携駐車場が満車になるほど賑わったそうです。また収穫後は、併設のカフェで自家製ブルーベリージュースを楽しむ人たちの姿も多かったとのこと。

こうして20年以上にわたってブルーベリーを育ててきた深谷さんに、おいしい実の選び方を聞きました。 

おいしいかは枝から取る瞬間に分かる


完熟のブルーベリー

完熟ブルーベリーの見分け方

ブルーベリーの見分け方は、見た目の色づきや粒の大きさも大切ですが、深谷さんによれば「いちばん違いが分かるのは、摘むときの手ごたえ」。完熟した実は、摘む瞬間に力を入れなくても、ポロッと自然に外れるのだそうです。

筆者もアドバイスを参考に実際に摘ませてもらったところ、やや力を入れて摘み取った実は酸味が強く残り、深谷さんが採ってくれた完熟のブルーベリーには、しっかりとした甘みを感じました。

ブルーベリーをおいしく食べるには

それでも、選んだ粒が全て完熟であることは、熟練の深谷さんでも不可能に近いと話します。そこで深谷さんから教わったのが、数粒をまとめて食べる方法。「完熟の実と少し酸味の残る実を一緒に頬張ると、甘味と酸味のバランスがちょうど良くなるんですよ」と話してくれました。

ブルーベリーの保存方法

持ち帰ったブルーベリーは、冷蔵庫でおよそ1週間楽しめます。追熟しないブルーベリーは、とれたてがおいしさのピーク。適切に保存して鮮度が良いうちに食べるのがおすすめです。さらに、洗って水気をよく拭き取りジッパー付き保存袋や密閉容器で冷凍すれば、長期間保存ができます。 

地域に根ざした果実として


ベンズファームのカフェ

小平市には、ベンズファームのほかにも30軒以上のブルーベリー農園があります。そのため、地元の方々にとってブルーベリーはとても身近な存在なのだそうです。JA東京むさしの植松さんによると、シーズンが近づくと飲食店からの問い合わせが増え、収穫期には各地の直売所や摘み取り園に多くの人が訪れるとのこと。

今季の摘み取り体験はすでに終了しましたが、店頭での直売や自家製ブルーベリージュースは引き続き販売される予定です。深谷さんは「ジャムやジュースもおいしいけど、ぜひ生のままで味わってほしい」と話します。

10代目として農地を受け継いだ深谷さんですが、近年の異常気象や極端な雨量の変化にも少なからず影響を受け、かつてない苦労があると言います。
「何十年とつけてきた日誌がまったく参考にならなくなり、生育管理が非常に厳しくなった」
それでも一つひとつの作物と向き合いながら、次世代に畑を残していくため試行錯誤を重ねて栽培を続けています。

東京産ブルーベリーの旬


東京都のブルーベリーの収穫時期は6月から9月中旬。ハイブッシュ系は6月下旬から7月中旬にかけて、小平市で多く栽培されているラビットアイ系は7月から9月中旬が旬です

東京産ブルーベリーを摘み取りや直売で


東京産ブルーベリーの摘み取り体験や直売ができる農園、直売所などをピックアップしました。販売時期や在庫状況は各農園、店舗にお問い合わせください。

TOKYO GROWN

「 体験したい」ページ内の検索窓でキーワード「ブルーベリー」を検索。
https://tokyogrown.jp/special/activity/

JA東京むさし ファーマーズ・マーケット(直売所)

https://www.jatm.or.jp/economy/

▼取材協力
ベンズファーム

ベンズファームでブルーベリー摘み取り
ベンズファームのブルーベリー畑とパックいっぱいの摘みたてブルーベリー(摘み取り体験をしたお客さま撮影)

ブルーベリーのほか、切り花や季節の野菜など、一年を通してさまざまな作物を育てています。中でも人気なのは、自家製の石焼きイモ。サツマイモを1ヶ月以上熟成させてから専用機械で焼き上げています。
https://bensfarm.wixsite.com/bens-farm
https://www.instagram.com/bens_farm2004/

取材者:みつはしさなこ
撮影:三國友哉

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